Hikaru's notes

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2022(令和4年度) 春期 午後1 問1: 新たなコンタクトセンタシステムの構築

概念解説(基礎から)

この問題は、化粧品・健康食品を扱うA社が、顧客からの問合せに対応する「コンタクトセンタ」の仕組みを刷新する、という話です。まず、コンタクトセンタ(いわゆるコールセンタにWebやチャットも含めたもの)がどう動いているか、基本から見ていきます。

IVR(自動音声応答)とPBX(構内交換機)

電話で問合せをすると、まず「〇〇のご用件の方は1を、△△の方は2を」といった自動音声が流れることがあります。これがIVR(Interactive Voice Response、自動音声応答)です。IVRの役割は、オペレータにつなぐ前に、問合せ内容をある程度振り分けることです。この問題では、IVRで内容を識別し、内容に応じて全国3拠点のどのコンタクトセンタに振り分けるかを決めています。

振り分けられた電話は、PBX(構内交換機。会社の中で内線・外線をつなぐ電話交換機)によって、実際にどのオペレータの電話機につなぐかが決まります。従来型のPBXは専用のハードウェアですが、この問題では「クラウド型PBX」への変更が出てきます。これは、オペレータの電話機をPC上のソフトウェア(ソフトフォン)に置き換え、PCとインターネット経由で発着信するというものです。ここが分かると、設問1(1)の「オペレータが在宅でも働けるようにするため」という答えに自然につながります。専用電話機がPCソフトに変わるので、オフィスに行かなくても電話対応ができるようになる、という理屈です。

オムニチャネル

「オムニチャネル」とは、電話・メール・チャット・SNSなど、複数の問合せ手段(チャネル)を統合的に扱う考え方です。この問題では、従来の電話・Webフォームに加えて、AIチャットボット・有人チャット・ボイスボット・ビデオ通話という4つのチャネルが追加されます。

これらのうち、AIチャットボットとボイスボットは「有人対応ではない」ため、24時間対応が可能という設定になっています。一方でオペレータが対応する電話・有人チャット・ビデオ通話は、従来どおり日中の勤務時間帯だけの対応です。

ナレッジベースとFAQ

「ナレッジベース」とは、FAQなどの知識を蓄積・管理する仕組みのことです。この問題では、コンタクトセンタの管理者だけでなく、商品を作っている「商品事業部」の社員もナレッジベースを使ってFAQを作成・更新できるようにする、という設計になっています。これは、実際に商品の問合せ内容を一番よく分かっているのは商品事業部だから、という業務上の理由があります。

コールバック

電話がつながるまで待つ代わりに、「後でオペレータからかけ直してもらう」ことを選べる仕組みです。呼び返し予約のようなものだとイメージすると分かりやすいです。

自動録音・自動テキスト化・キーワード分析

通話内容を自動的に録音し、それをAIの音声認識でテキスト化し、さらにそのテキストからキーワードを分析する、という一連の流れです。これによって、「どんな問合せやクレームが多いか」を人手で集計しなくても自動的に把握できるようになります。

この問題の設問は、こうした個々の機能が「なぜ導入されるのか」「誰のどんな困りごとを解決するために設計されているのか」を、本文中のヒアリング結果(表2)と機能一覧(表3)を突き合わせて読み解く力を問うています。

概念解説(基礎解説なし)

コンタクトセンタのオムニチャネル化(電話・Webフォームに加えてAIチャットボット・有人チャット・ボイスボット・ビデオ通話を追加)を題材にした問題です。クラウド型PBXでソフトフォン化して在宅勤務対応、AIチャットボット/ボイスボットは有人対応ではないので24時間対応可能だが稼働当初は対象問合せを限定、有人チャットはオペレータを専任化、といった「新機能の運用制約」の設計意図を、表1(問合せ内容の特徴)・表2(ヒアリングで抽出した課題)と突き合わせて読み解く問題です。設問2(3)のように、1つの施策(随時FAQ更新)が2つの狙い(早期掲載+公開による問合せ抑制)を同時に持っている、という「複合的な目的の読み取り」が主な出題ポイントになっています。

問題文

状況設定は、設問を解くのに必要な範囲で要約しています。表1・表2・表3は原文の要点を掲載します。

A社は、化粧品、健康食品などの個人向け商品の製造・販売を行っている。商品は実店舗やECサイトのほか、A社直営のオンラインストアでも販売しており、近年はオンラインストア経由の販売強化に力を入れている。

〔カスタマサービスの現状〕

現在、電話とWebフォームで問合せを受け付けている。電話はIVRで内容を識別し、国内3拠点のコンタクトセンタに振り分けられ、PBXでオペレータの電話機につながる。Webフォームからの問合せも同様に振り分けられ、電話対応とは別の対応チームが担当者を割り当ててメールで回答する。四半期に一度、問合せ内容を分析してFAQとしてWebサイトに掲載している。

顧客の行動ごとのよくある問合せ内容(表1、要約):

顧客の行動 よくある問合せ 特徴
商品購入前の検討 成分、商品の違い、お勧め商品 顧客ごとに気になる点が異なり多岐にわたる
購入方法の情報収集 店舗情報、新商品の取扱状況 店舗情報を参照すれば明確に回答できるものが多い
オンラインストアでの購入 配送料、配送方法変更、注文キャンセル、返品 オンラインストア上で処理できないものが多い
購入した商品の使用 使用順序・タイミング、使用期限、保管方法 商品ごとに定められた回答ができるものが多い
会員情報の確認 パスワード忘れ、ポイント照会 本人確認を行うことで対応できるものが多い

〔カスタマサービスの課題〕(表2、要約)

〔新たなコンタクトセンタシステムの構築〕(表3、要約)

これらの機能はコンタクトセンタのオペレータ・管理者向けだが、ナレッジベースとキーワード分析は商品事業部の社員も利用できることにした。

〔運用〕

設問(原文どおり引用)

設問1 〔新たなコンタクトセンタシステムの構築〕について、(1)~(5)に答えよ。

(1) クラウド型PBXを導入した、オペレータの勤務形態の改善に関する目的を25字以内で述べよ。 (2) AIチャットボット及びボイスボットでは、稼働当初はどのような問合せに対応することを想定しているか。問合せ時の顧客の行動を表1中から全て答えよ。 (3) ある条件のときは、AIチャットボットから有人チャットを起動できない設定にしているが、それはどのような条件のときか。コンタクトセンタの運用を踏まえて、20字以内で述べよ。 (4) 電話のコールバックの仕組みを導入して解決を図る直接的な課題を表2中の(a)~(j)の記号で一つ答えよ。 (5) キーワード分析の機能を商品事業部の社員が利用できることにした理由を35字以内で述べよ。

設問2 〔コンタクトセンタシステム構築後の運用〕について、(1)~(3)に答えよ。

(1) 本文中の下線①で想定する効率的な顧客対応とは具体的にどのようなものか。25字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線②の状況として、カスタマサービスの課題から二つ想定している。一つは、特定のコンタクトセンタへの問合せが急増して、対応しきれなくなりそうな状況である。もう一つ想定している状況を30字以内で述べよ。 (3) 随時FAQの作成・更新を行い、公開できるようにした目的を、カスタマサービスの課題を踏まえて30字以内で述べよ。

正答解説

設問1(1) 解答例:「オペレータが在宅でも働けるようにするため」

根拠は「概念解説(基礎から)」で触れたとおりです。クラウド型PBXにより、オペレータの電話機がPC+ソフトフォンに変わり、PCとインターネットさえあれば発着信できるようになります。表2の課題(e)「フルタイムで出社して働くことが難しいオペレータもおり、在宅かつ柔軟な勤務時間で働きたいというニーズが高まっている」という記述と直結しています。

設問1(2) 解答例:「購入方法の情報収集、会員情報の確認」

採点講評では、この設問の正答率が低かったと明言されています。多くの受験者が表1だけを見て「購入した商品の使用」も答えに含めてしまったそうです。しかし本文の運用ルールに「稼働当初は、オペレータの業務を補完する目的で、急増しやすく、かつそれぞれの機能の特徴で対応できる見込みが高い問合せを対象にする。一方で、新商品購入者の声を直接聞きたい狙いもあり、顧客が使用中の商品に関する問合せは、稼働当初は対象にしない」とはっきり除外が書かれています。表1の情報だけで判断せず、本文の運用方針の記述と突き合わせる必要がある、という点がこの設問のポイントです。

設問1(3) 解答例:「オペレータの勤務時間帯以外のとき」

AIチャットボットは24時間対応可能ですが、有人チャットはオペレータが対応するため、オペレータの勤務時間帯(日中のみ)以外は当然ながら有人チャットを起動できません。深夜早朝にAIチャットボットから「有人に切り替えます」と言われても対応できる人がいない、という当たり前だが見落としやすい制約です。

設問1(4) 解答例:(c)

表2(c)「問合せが急増すると、オペレータに電話がつながるまでに長時間待たせることになり、顧客からのクレームにつながっている」が、コールバック(待つか折返しを選べる仕組み)によって直接解決される課題です。

設問1(5) 解答例:「商品の問合せ、クレーム内容などを商品の改善につなげたいから」

表2(i)「商品の改善のために、他の情報も有効に活用したい」という業務部門側の要望が根拠です。採点講評では「機能でできることだけでなく、何の目的に機能を利用させるのかを理解した上で解答してほしい」と指摘されており、単に「キーワード分析ができるから」ではなく、その先の業務目的(商品改善)まで書く必要があります。

設問2(1) 解答例:「一人のオペレータが同時に複数の顧客と対応する」

表3の有人チャットの説明に「一人のオペレータが複数のチャットを起動し、同時に複数の顧客との対応ができるようにする」とあります。電話やビデオ通話は基本的に1対1ですが、チャットは並行対応が可能なので、専任化することでその特性を最大限活かす、という設計意図です。

設問2(2) 解答例:「特定のコンタクトセンタを一時的に閉鎖せざるを得ない状況」

表2(h)「大規模災害時、感染症の拡大時などには、特定のコンタクトセンタを一時的に閉鎖せざるを得ないケースが想定され、その際にカスタマサービスの継続が危ぶまれる」が根拠です。設問文で既に一つ目の想定状況(問合せ急増)が示されているので、残るカスタマサービス課題の中から拠点閉鎖リスクを拾えるかがポイントです。

設問2(3) 解答例:「新商品発売時に、簡単な問合せが急増しないようにするため」

採点講評でこの設問は正答率が低かったとされています。狙いは「随時FAQの作成・更新でFAQを早く掲載できるようにしたこと」と「そのFAQを公開することで簡単な問合せの急増を防ぐこと」の2つが組み合わさっている点ですが、片方にしか気づかない解答が多かったそうです。表2(g)「新商品の発売時は、当該商品のFAQが掲載されていないので、電話及びWebフォームからの問合せが急増する。FAQを見れば分かるような簡単な問合せも多いので、FAQを早く掲載したい」を、単に「早く掲載できるようにするため」で終わらせず、「その結果何が防げるのか」まで書く必要があります。1つの施策が複数の目的を同時に達成している、という読み方が、概念解説で触れたオムニチャネル設計全体を貫くポイントです。